電源トランス リード端子の絶縁破壊解析

絶縁破壊解析では、静電界解析で得た電磁界データを用いるのが一般的です。以下では電源トランスのシールドリングとリード端子についてCST EM STUDIO(CST EMS)でシミュレーションを行った例をご紹介します。なお本事例のモデルは、Siemens Transformers(Nuremberg, Germany)のDr. Beriz Bakijaのご提供によります。

絶縁破壊リスクを推定する過程では下記の事柄が重要です:

  • 正確な形状モデリング。たとえばPro/EのようなCADで作成したモデルデータを取り込み、パラメータ化する機能が必要です。

  • 曲面を持つ構造要素を適切にモデリングするための、たとえばカーブした四面体メッシュエレメントなどのメッシュトポロジ。絶縁破壊解析では特に不可欠です。。

  • メッシュ適応による電磁界値の収束。たとえば「形状にスナップ(snap to geometry)」機能は、メッシュ適応過程のモデル形状をインポート時の形状に忠実であるように保ち、人工的な特異点が生じないようにするのに役立ちます。

  • 正確な電磁界結果を得るための高次要素。。

  • ラインに沿う電磁界データの抽出などのポストプロセス機能の統合。外部ツールで破壊された電磁界の評価を行うのに必要なデータのエクスポート機能。

<p>図1: Siemens中型電源トランス</p>

図1: Siemens中型電源トランス

図1は、ワインディング上部のシールドリング位置を示す電源トランス断面図です。リード端子は背面にあり、ここには示していません。解析モデルはすべてCST EMSのモデラーで作成しました。

<p>図2: リード端子の形状</p>

図2: リード端子の形状

リード端子部分の3D画像を図2に示します。同部分の構成要素と材質特性を図3に示します。

<p>図3: トランスのシールドリングとリード端子モデルの構成要素と材質特性</p>

図3: トランスのシールドリングとリード端子モデルの構成要素と材質特性

CST EMSでは、モデルの構成要素をグループ化し、そのグループに対して材質特性の割り当てることができます。同様に、グループ化した要素に電位を適用することにより、電位定義を効率よく行うことができます。CST EMSは要素間の電気的接続を自動的に検出するため、電位の定義は、接触したオブジェクトのひとつに行えば十分です。接続したすべての要素に同じ電位が適用されます。

<p>図4: 適用された250kV電位。その他のPEC要素はすべて自動的にゼロ電位に設定されます。</p>

図4: 適用された250kV電位。その他のPEC要素はすべて自動的にゼロ電位に設定されます。

またCST EMSには電位が設定されていないPEC要素を扱う機能があります。ユーザーは要素に与える電位をground/floatingから選択します。groundに設定したモデルの250kV定義を図4に示します。

<p>図5: 計算した電位とサーフェスメッシュ</p>

図5: 計算した電位とサーフェスメッシュ

自動生成したメッシュは、メッシュ適応機能を使用して、あるいは手動で調整します。メッシュ適応過程ではメッシュスナッピング機能により元の形状に忠実なメッシュを作成できます。習熟したユーザーはローカルメッシュ機能を使用して手作業で局所的にメッシュを調整し、適応過程を省くことができます。最大メッシュステップ幅は、単一オブジェクトまたはグループ化した構造要素に適用可能です。

結果の正確さはメッシュエレメントの次数とトポロジに依存します。この事例では2次ベースの関数エレメントを使用します。CST EMSのソルバー技術にマルチグリッドアルゴリズムを適用することにより優れたスケーラビリティとメモリ効率を実現し、多数の未知数が含まれる方程式の解を短時間で求めることができます。本事例より大規模で複雑な問題もCST EMSで処理することができます。

計算により求めた電位とサーフェスメッシュを重畳したプロットを図5に示します。

<p>図6: フィールドラインの計算に向けて選択された面(強調表示)</p>

図6: フィールドラインの計算に向けて選択された面(強調表示)

フィールドラインの計算手順のひとコマを図6に示します。目的のオブジェクトについて複数の面または点を定義すると、自動的にフィールドラインの計算が行われます。計算されたフィールドラインの例を図7に示します。

データをエクスポートし、論文[1]、[2]の記述と同様な処理を行うことにより、絶縁破壊リスクを推定することができます。

<p>図7: リード端子から発散するストリームライン</p>

図7: リード端子から発散するストリームライン

まとめ

本事例では電源トランスのシミュレーションを通じて、パワーエンジニアリングの装置と部品のシミュレーションに向けたCST EMSの機能をご紹介しました。

参考文献

[1] http://www.aetjapan.com/software/App.php?Emfield_low_frequency=Power_Engineering&AP=577

[2] http://scee2012.ethz.ch/abstracts_new/SCEE12_Abstract_67_talk_Sterz.pdf

会社名
株式会社エーイーティー
所在地
〒215-0033
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