磁気により応力伝達する磁気ギアは、機械式ギアのようなパーツ同士の接触による騒音が無く、磨耗による損失もありません。高トルク密度の達成を目的として、主に電気機械に使用されます。
本資料ではCST EM STUDIO(CST EMS)によるシミュレーション事例を紹介し、このタイプの磁気トルクの解析手順と便利な機能について説明します。ギアは実質的には2つの同期機です。トランジェント解析を行うことによって、運動する回転子の荷重角度を決める手間を省くことができます。
この種のシミュレーションにはMoving Mesh機能が役立ちます。通常のメッシュでは時間ステップごとに生成し直す必要がありますが、この機能にはそれがありません。また、CST EMSのトランジェント解析では、各時間ステップについて運動方程式を解き、スタートアップ特性を計算することができます。
CST EMSで作成したシンプルな磁気ギアモデルを図1に示します。モデルは内側回転子と外側回転子で構成され、回転子の表面に複数個の永久磁石が載置されています。これらの極数によってギア比が決まります。このモデルでは1.5です。磁極のN極とS極が交互に入れ替えられ、径方向外向きに磁化されます。回転子と固定子は非線形材質とします。
CST EMSは3Dモデルについて2Dシミュレーションを行うことができます。2D断面を指定するのみで計算が行われます。この例でもこの方法によって、3Dシミュレーションよりもはるかに短い時間で結果を求めることができます。
静磁界シミュレーションを何度も行うことでも解析は可能ですが、2つの回転子の間の荷重角度を決める手間がかかります。低周波トランジェントソルバーを使用することで、積層により渦電流の発生が低減されることを前提とした場合でも、解析を容易に行えます。
低周波トランジェントソルバーによる運動解析では、並進運動または回転運動のモーションギャップを定義します。ギャップ定義は一定速度、時間カーブに対する角度位置、運動の動的方程式の3つの方法で行うことができます。この解析例ではすべての方法を使用して回転運動のギャップを定義します。
図2は3つのギャップ定義を示します。加速カーブは外側回転子に関連付けられます。2つの回転子の間にあるカップリングブリッジは回転数ゼロ(定速=0RPM)とし、固定を表します。自由回転する内側回転子は、運動方程式によってギャップを定義します。この方程式が時間ステップごとに解かれます。この回転運動のパラメータも図2に示しています。
低周波トランジェントソルバーの運動解析で精度の鍵となるのがMoving Mesh機能です。その名の通り、この機能を使用すると、回転ギャップのメッシュを時間ステップごとに作成し直す必要がありません。コギングトルクのように結果に悪影響を与える数値的なノイズを、これにより減らすことができます。Moving Mesh技術を図3に示します。
先述の回転ギャップ定義により、モデルは次のようにふるまいます: 外側回転子の加速により発生するトルクは、固定子ブリッジを経由して内側回転子に伝達します。慣性や抵抗などにより内側回転子がスタートアップし、外側回転子に同期しようとします。
負荷トルクは速度の線形関数として定義されるため、高速では許容トルクの範囲を超えます。その結果、回転子の同期が失われ、駆動トルクがゼロを中心として振動的に変化することにより回転子が完全に停止します。
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