CST EM STUDIO(CST EMS)の応用例として産業用定電圧回路遮断器のシミュレーションをご紹介します。本事例では、まず磁界のソースとなる電流を計算し、さらにマクスウェルの応力テンソルを使用して磁界により生じる応力を計算します。高次の有限要素とメッシュ自動適応機能を用いることにより、応力を正確に計算することができます。複雑なCADモデルをインポートした形状モデルを使用して、材質の非線形性を考慮しながら静磁界ソルバーで計算を実行します。
CATIAからインポートした回路遮断器の形状モデルを図1に示します。プラスチックなどの不要なパーツを取り除いたほかは、特に修正の必要はありませんでした。例えばエアギャップの位置やコイル幅についてパラメトリックな解析を行う場合は、モデルデータを修正してパラメータを割り当てることができます。
今回解析する回路遮断器は、磁気プランジャーの周りに母線導体が巻かれています。電流値が所定の設計値を超えるとプランジャーにかかる応力が大きくなり、回路の接続を遮断するしくみです。電磁界と応力の計算に関連性の薄いスプリングなどの部品は、このモデルに含まれていません。
母線の導体を流れるDC電流のコンタープロットを図2に示します。静磁界を計算するソースとして、自動計算した電流を使用します。メッシュは、最初にローカルメッシュを手動で少し操作し、その後に自動適応機能を適用します。
図3は、母線の導体を流れるDC電流のプロットです。
静磁界シミュレーションによって得られた磁束密度分布プロットを図4に示します。複雑な3Dフィールドパスは、このような形状について3次元シミュレーションを行うことの重要性を示します。
この磁束密度分布に基づいて、電機子などにかかる磁力を計算することができます。加重したマクスウェル応力テンソル(MST)を用いる計算法をCST EMSに用いて計算を行います。正確な解が求められるように、メッシュ適応のパスごとに応力モニターが収束をチェックします。計算では(コ)エネルギー、鎖交磁束、インダクタンスなどの値も自動的に出力します。
上記の手順を繰り返すことにより、引き抜き力のデータが得られます。CST EMSでは、インポートした形状についてもパラメータ化が可能です。このモデルでは、電機子の位置をコアに対する相対位置としてパラメータで定義しています。それぞれの位置で応力を計算し、その結果から引き抜き力が得られます。図5にそのプロットを示します。
このようなシミュレーションの結果を使用して、たとえばシステムの動力レベルや磁気レベルでの回路の最適化を行うことができます。解析結果をどのようにエレクトロメカニカルシステムに組み入れるかについては、[1]を参照してください。ソレノイドの状態空間モデルを生成し、それを使用してCST DESIGN STUDIO(CST DS)でシミュレーションを行った事例をご紹介しています。
解析的なアプローチでは取得困難な複雑なエレクトロメカニカル部品の特性情報が、3次元電磁界シミュレーションを行うことにより得られます。取得したデータをもとに、動力学的なスタディが可能となります。この事例にあるようなパラメトリックな静磁界解析には、たとえばモデルライブラリを迅速に効率よく生成し、それを回路シミュレータに読み込み動力学スタディが行える利点があります。
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