トランス負荷時タップ切替装置の誘電破壊シミュレーション

トランスの負荷時タップ切替装置(OLTC)の開発では、物理試験を何度も実施し、製品の機能性と品質の確保に努めます。しかしこれらの試験は通常OLTC単体で行われ、トランスやタップリードも含めたシステム全体の試験はプラントに設置する最後の段階にならないと実施できません。

トランスとタップリードが電界強度に及ぼす影響は、CST EM STUDIO(CST EMS)の静電界シミュレーションで調べることができます。

一般的なOLTCのシミュレーションの詳細と解析結果、および研究成果は、論文 [1] と [2] に記載しています。また、誘電破壊の評価に向けたCST EMSの機能とワークフローについては、論文 [3] と [4] に記述があります。

この種の解析を行う場合、形状を簡略化するのはシミュレーションの目的に沿わないため、CADインポート機能は非常に重要です。つまり、さまざまなCADフォーマットで記述された複雑な形状をインポートし、問題になりそうな箇所を自動修復する機能が必要となります。OLTCの形状を図1に示します。

<p>図1: 自動生成した四面体メッシュ</p>

図1: 自動生成した四面体メッシュ

静電界シミュレーションを正確に行うには曲状形状の近似が鍵となるため、二次のカーブエレメントをベースとする関数を適用します。CST EMSのソルバーは、マルチグリッド機能を使用して大型モデルのシミュレーションを効率よく実行します。ロバストなメッシングアルゴリズムが生成するメッシュ(図1)により、2,200万の未知数を含む方程式が導出されます。

<p>図2: タップ切替装置の電位</p>

図2: タップ切替装置の電位

シミュレーション結果の静電界スカラー電位を図2に示します。ソルバーは、たとえば電界強度などの結果も自動的に出力します。

<p>図3: 誘電破壊シミュレーションから生成された電気力線</p>

図3: 誘電破壊シミュレーションから生成された電気力線

電気力線の計算にはシードポイントが必要ですが、CST EMSでは目的の部品の面を選択することで簡単に計算を実行できます。そのようにして出力した電気力線を図3に示します。

ASCII形式でデータを出力し、外部ツールで誘電破壊電圧を計算することができます。

参考文献

[1] M. Wiesmüller, B. Glaser, F. Fuchs, and O. Sterz: "Dielectric Breakdown Simulations of an OLTC in a Transformer", COMPEL, Issue #4, Vol 33, July 2014

[2]http://scee2012.ethz.ch/abstracts_new/SCEE12_Abstract_67_talk_Sterz.pdf

[3]24kV SF6ガス絶縁リングメインユニットにおける開閉器の静電界シミュレーション

[4]電源トランス リード端子の絶縁破壊解析

会社名
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所在地
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