自由空間に置かれた小型ダイポールのシミュレーションを行い、共振周波数、ドライブポイントインピーダンス、放射効率、トータルQを計算した事例です。ka < 0.5 と定義される小型アンテナは、半径が 0.0796 λ未満の球の内部に全構造がすっかり収まることを意味します。この事例はさらに小さく、ワイヤ直径を無視したアンテナ全体が半径 0.0415λ の球に収まっています。(モデル提供:Steven R.Best, Air Force Research Laboratory, Hanscom Air Force Base, USA )。
CST MW STUDIO(CST MWS)で作成したダイポールの3次元モデルを図1に示します。半径0.0564λの反作用エネルギー球に全構造が収まっています。二巻きのアンテナが収束するYmax(赤色で表示)を給電点としています。
サブグリッドを設定したダイポールモデルを図2に示します(断面)。 サブグリッド機能は、複雑な形状に対し、効率のよいメッシュを設定する機能です。
モデルにE-plane 対称条件(XY 面を電気面とする)を設定することにより、シミュレーション時間を半分に短縮します。
抵抗 0 となる周波数は、文献では 299.6 MHz、シミュレーションでは 295.5 MHz となりました(誤差 0.01 )。 ドライビングポイントインピーダンスのシミュレーション値は、PEC では 9 Ohm、銅では 10 Ohm でした。
トータルQ のシミュレーション値は、PEC では 116、銅では 101 でした。
CST MWSの遠方界プロットを図5に示します。 Z 方向( E-plane に対して法線方向)の寸法が僅かに 1/6λであるにもかかわらず指向性は 1.63 dBi を示し、半波長ダイポールの 2.16 dBi に比べて良好な結果が確認されました。
PBA技術を用いたCST MW STUDIOは、湾曲した面のある構造にも直交グリッドを使用して結果精度を損なわずに計算を行います。 通常であればメッシュ数が膨大な数にのぼる3 次元カーブ構造にサブグリッド機能を適用することにより、メッシュの数を最小限に抑えることができました。
[1] S. R. Best, "Low Q Electrically Small Linear and Elliptical Polarized Spherical Dipole Antennas,"
IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol. 53, No. 3, pp. 1047-1053, March 2005.
[2] S. R. Best, "The Radiation Properties of Electrically Small Folded Spherical Helix Antennas,"
IEEE Transactions on Antennas and Propagation, Vol. 52, No. 4, pp. 953-960, April 2004.
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