円形アームのあるUWBダイポールアンテナに関する発表(ICU 2005:チューリッヒ)をもとに、CST MW STUDIO(CST MWS)でモデリングとシミュレーションを行った事例をご紹介します。ダイポールアンテナが選好されたのはその無指向性の放射分布のためですが、これに円形アームを使用すると広帯域特性が得られることが知られています。この特殊な給電法により、放射分布における擾乱を回避することができます。
ダイポールアームとストリップライン給電を図1に示します。寸法の値は論文[1]を参照しました。SMAからストリップラインへの正確なトランジションについては寸法の記載が無かったため、推定値を用いています(図2)。なお、給電とトランジションはアンテナ性能に直結する重要な領域です。
アンテナモデルはパラメータを使用して作成します。open境界条件を設定することにより開放空間を定義します。すべての金属部分をPECに定義します。損失のあるFR4導体には周波数5GHzのtanδ=0.025を適用することによりDebye特性を表現します。仰角面の方向に磁気対称条件を付加します。メッシュ設定はすべてデフォルトのままで初期メッシュを作成しました。六面体メッシュにPBA機能を使用することにより、詳細部分を表現しつつ粗めの初期メッシュで計算を行うことができます。
CST MWSの時間領域ソルバーはこの事例のような広帯域計算を極めて効率良く行います。2GHzのラップトップコンピューターを使用した計算は63秒で終わりました。
次に、同じ計算を、メッシュ適応機能を適用して行います。この機能の適用により、重要な意味を持つ領域のメッシュが密になります。数回の適応パスの結果、広帯域Sパラメータ誤差が2%以内となりました。適応パスの回数に対応する計算時間を図3左に、Sパラメータ収束を図3右に示します。
各適応パスのS11を図4に示します。この結果は、[1]に記載されているシミュレーション結果とよく一致しています。
計算された放射分布のpolarプロットを図5に示します。指向性のco成分とcross成分をdBで示しています。方位角面(左)では、6GHzまでは全方位的な放射分布を示し、それより高い周波数では最小/最大レベルの差が3dBを上回っています。
仰角面(右)にはコネクタ効果が見られます。このプロットでは、すべてのカーブは各々の最大値で正規化しています。周波数8GHzでは放射分布がSMAコネクタとは反対の方向に傾斜しています。同じ傾向が図6(左)にも見られます。
図6(右)は放射分布を、方位角面と仰角面の定義とともに3Dプロットで示します。計算された最大利得3dBは、[1]に記載された2.63dBiに近い値です。3Dプロットはアンテナ放射分布が視覚的に捕らえ易い表示形式です。8GHzの遠方界3Dプロットを図7に示します。分布が傾斜していることがよく分かります。
[1]に記載された複雑な構造のアンテナを、CST MW STUDIOの時間領域ソルバーにPBAを使用して計算しました。SMA、トランジション、材質プロパティについては詳細の記載が無かったことを考慮すると、[1]に記載の結果と相当に良好に一致した計算結果が得られました。測定結果とシミュレーション結果の比較については[1]を参照してください。
[1] E. Gueguen, IETR-INSA, F. Thudor, P. Chambelin, THOMSON R&D France : "A low cost UWB Printed Dipole Antenna with High Performances", Conference Proceedings of the 2005 IEEE International Conference on Ultra-Wideband, Sept. 5-8,2005 Zurich
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