効率の良い計算機能はCST MW STUDIO(CST MWS)の最大の特長のひとつです。例えばアレイアンテナの構造全体を、エッジ効果を含めてシミュレーションすることができます。下記に紹介するような大規模アレイの場合は、仮想的な無限アレイの定義によりさらに効率の良いシミュレーションが可能になります。CST MWS周波数領域ソルバーのユニットセル機能を使用して、無限アレイを簡単に定義することができます。
二重の周期性を持つ平面構造であるフェーズドアレイアンテナは、広く電子機器に応用されます。ここでは、厚さが可変なアパーチャ部分に誘電レドームを付けた、一重周期のオープンエンド導波管フェーズドアレイアンテナの解析例を紹介します。
解析では、アパーチャから一定の距離に吸収境界(いわゆるFloquetポート)を設定し、周期構造に生じる平面波を吸収します。モデルの側壁には複素周期境界条件を設定し、平面波の伝搬が維持されるようにします。ここでは特に、2つの平面波が存在する位相シフト角においてシミュレーションを行います。結果として、2つの平面波を重畳した場合とユニットセルモデルを使用した場合では、同じ電磁界分布が得られました。
解析に使用したモデル構造を図1に示します。図では導波管部分を非表示とし、構造内部の電磁界分布を可視表示しています。導波管の前面に誘電体レドームが示されています。
CST MWSのシミュレーションでは初期結果としてSパラメータが得られます。図2は3GHzのプロットで、周期境界間の位相シフトと反射係数|S11|の相関を示します。左は測定結果([1]より転載)、右はMWSによるシミュレーション結果です。
Sパラメータには、部品の電磁特性に関する重要な情報が含まれています。誘電シートの厚さが1/2*波長の場合の結果(上図右の緑カーブ)は、最大放射が得られる(|S11|が最小となる)ところで45度の位相シフトを示します。また位相シフト70 度付近には、ほとんどのエネルギーが反射される「ブラインドスポット」が見られます(|S11|=1)。150度以上ではグレーティングローブが現れ、2つの平面波を重畳した波動パターンが見られます。この物理効果はモニター機能が保存した分布図によって明らかに示されます。
上記結果を検証するために、2つの純粋な平面波を重畳して図3c)と同じ結果を合成することができます。方向や振幅といった2つの平面波の情報は、CST MWSシミュレーションから簡単に抽出することができます。2つの平面波を次図に示します。
2つの波を合成した結果を図5下に示します。ユニットセルシミュレーションから得られた分布(図5上)に極めて近い結果が得られました。
CST MW STUDIOではグリッド角度を自在に設定して周期構造やユニットセル構造を直感的に扱うことができます。モード分布の周期性を適切に考慮するウェイブガイドポート励起を定義し、いわゆるFloquetモードを適用して計算領域の高次波形を吸収することにより、従来のopen境界に比べ信頼性を一層高めることができます。適切なFloquetモードの設定は、周期構造を正確に効率良く解析する上で重要です。
[1] N. Amitay, V. Galindo and C.P. Wu, " Theory and Analysis of Phased Array Antennas", New York: Wiley Interscience, 1972, p 238
[2] J. P. Montgomery, "Scattering by an Infinite Periodic Array of thin Conductors on a Dielectric Sheet", IEEE Trans on Ant+Prop, Vol Ap - 23, No. 1, Jan 1975
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