本資料で紹介する凹型コレクタには、融合自由電子メーザー(FEM)のビームエネルギーとリカバリーシステムの部品として、ビームを集めると同時に二次電子のバックストリームを抑制する働きがあります。したがって二次電子が電極の背後に向かって加速して行くように設計します。シミュレーションの結果得られたコレクタ内部のポテンシャル分布と電磁界分布を図1に示します。
CST PARTICLE STUDIO(CST PS)でモデリングとシミュレーションを行い、その結果得られた軌道プロットを図2に示します。進入した電子ビームが電界の影響を受けて減速する様子が確認できます。 設計上の理由から、このコレクタのビーム軌道は電極の背面で終わっています。 電極に衝突した一次粒子から二次電子が生じます。しかし、二次電子は発生源に落ち、背後に流れ出ることはありません。
CST PSでは上記の二次電子放出をFurman[1]による完全なprobabilistic モデルで表すことができます。 この自己矛盾が無いモデルは、運動エネルギーと一次電子の入射角度を考慮して二次電子放出を表します。モデルの放出材質プロパティを編集して、シミュレーションに使用することができます。
凹型コレクタの研究では、初期ビームエネルギーの値を変えてそれぞれにシミュレーションが行われています。このシミュレーションをCST PSで再現しました(Pulsar PhysicsのM.J.de Loos、S.B.van der Geer両氏の許諾とご好意による)。結果のビーム軌道を図3に示します。CST PSによる結果は、GPTの結果(図4)と非常によく一致しています。画像からコレクタの性能をはっきりと読み取ることができます。初期エネルギー値が高いほどビームがコレクタの深部へと通り、より高いエネルギー電子を捕獲するステージに達します。
[1] M. A. Furman and M. T. F. Pivi, "Probabilistic model for the simulation of secondary electron emission", Physical Review Special Topics, Accelerators and Beams, Volume 5, 2002.
[2] M. J. de Loos, S. B. van der Geer Pulsar Physics, Nuclear Instr. And Meth. In Phys. Res., Vol. 139, 1997.
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