6~18GHz・20W進行波管アンプの電子銃

すべての荷電粒子の応用は電子銃から始まります。電子銃のなかでDC電力はビームに変換され、ビームはさまざまな電磁構造との間で相互作用を起こします。電子管の基本概念を図1に示します。

図1: 電子銃の概念図
図1: 電子銃の概念図

電子銃にはビームの遅波回路があります。回路内で電磁波と相互作用したビームは、最終的にコレクタに収集されます。相互作用が生じるためには、荷電粒子の速度と回路の電磁波の速度を一致させる必要があります。この電磁波の速度は進行波管の周期的固有モードシミュレーションに説明した解析によって事前に知ることができます。この速度から、印加する電圧が決定されます。結果的に放出電流が最大となるように電子銃を設計します。

図2:電子銃の構造: 断面図(左)とフルモデル(右)
図2:電子銃の構造: 断面図(左)とフルモデル(右)

本事例の電子銃の構造を図2に示します。静電界(Es)シミュレーションではカソードと焦点エレクトロード(forcussing electrode)とアノード、静磁界(Ms)シミュレーションでは鉄ヨークと永久磁石を解析します。CST EM STUDIOのEsソルバーとMsソルバー(CST PARTICLE STUDIO(CST PS)から操作)を使用して、それぞれ電位と永久磁石を励起源として計算を行います。詳細を図3に示します。鉄ヨークを非線形材質として考慮し、Msソルバーの非線形反復スキームによって作用点を得ています。

図3: 励起源: 静電界シミュレーション用(左)と静磁界シミュレーション用(右)
図3: 励起源: 静電界シミュレーション用(左)と静磁界シミュレーション用(右)

金属体に与えた電位により電位分布(イソライン)と電界(アロー)が生じる様子を図4に示します。この電界が粒子を目的の速度まで加速させます。放出プロセスでは、空間電荷制限モデルを用いてカソード前面の電子雲を考慮します。また、計算領域におけるビームの空間荷電をCST PARTICLE STUDIO Trackingソルバーの電子銃反復(gun iteration)機能が考慮します。

図4: 静電電位(イソラインで表示)と電界(アローで表示)
図4: 静電電位(イソラインで表示)と電界(アローで表示)

ビームの焦点が保持されるように、周期永久磁石(PPM)にスタックアップを適用します。その結果得られる磁界を図5(左)に示します。図5(右)は、長手方向の磁界(縦軸)と距離(横軸)の比率を示します。

図5: 磁束密度の断面ビュー(左)と、Bx vs. x の1D結果
図5: 磁束密度の断面ビュー(左)と、Bx vs. x の1D結果

CST PSでは、入射した荷電粒子の軌道を計算することができます(図6左)。速度の色分け表示により、静電界を伝搬する粒子の加速する様子が分かります。PPM領域に入った粒子は、焦点調節の影響で波打った軌道を示します。静磁界は粒子を加速も原則もしないため、この領域では軌道の表示色は一定で変化しません。

放出電流の収束を図6(右)に示します。速度は設計値の41mAにほぼ一致した値を示しています。

図6: 粒子軌道(左)と放出されたソース電流(右)
図6: 粒子軌道(左)と放出されたソース電流(右)

まとめ

電子銃シミュレーションの代表的な設定とワークフローをご紹介しました。粒子軌道のシミュレーションは、CST PARTICLE STUDIOのTrackingソルバーで行うことができます。gun iteration機能により空間電荷を考慮した計算が可能です。計算の結果得られた電流と軌道は、CST STUDIO SUITEでポスト処理を行うことができます。

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