コリメータはリニア加速器システムのバックグラウンドノイズを低減する目的で用いられますが、使用することにより短距離のwakefieldが生じます。wakefieldは横断キックを招き、さらには軸外ビームを生じるおそれがあります。このようなwakefieldの効果を設計段階において考慮し、不安定性を未然に回避する必要があります。
横幅38mm、テーパ300mradのコリメータ形状を図1に示します。対称形の構造であることから、図2に示すように対称条件を設定することができます。この設定により、シミュレーションは構造の1/4に対してのみ行われ、計算時間を短縮することができます。端面にウェイブガイドポートを定義します。ウェイブガイドポートは、不連続部分で励起される可能性のある空洞ウェイブガイドモードを吸収する役割を果たします。ビームそのものはCST PARTICLE STUDIOの特別な境界条件で吸収します。
図3にはバンチ長、総電荷量、ビーム速度が表示されています。青色の線はビーム軸を表します。まずwakefieldを、次に損失係数を直接積分法で求めました。図3の赤色の線は積分の軸を示します。
電界の絶対値を図4に示します。 最初は運動電荷による電界のみですが、不連続部分を通過する際にwakefieldが励起され、これによって後続の粒子に偏向が生じる可能性があります。
損失係数は縦方向のウェイクポテンシャルから[1]に従って決定されます。パラメータスタディ(図5参照)により、テーパ角度が大きくなるにつれコリメータの損失も同様に増加する様子がはっきりと確認できます。結果に表れるこの傾向は[2]に記載の検証でも報告されています。
CST PARTICLE STUDIOを使用して、加速器システムのwakefield効果を予測する事例を紹介しました。シミュレーションにより、時間依存の電磁界分布が得られます。CST PARTICLE STUDIOにはウェイクポテンシャル、インピーダンス、バンチスペクトラム、損失係数を自動的に評価し、resultツリーに表示する機能があります。テンプレートを使用して、ポスト処理のカスタマイズが容易に行えます。
[1] T. Weiland, R. Wanzenberg: "Wakefields and Impedances", Proceedings of the CAT-CERN Accelerator School (CCAS), pp. 140-180, 1993.
[2] C.-K. Ng, T. O. Raubenheimer, P. Tenenbaum:"Numerical Calculations of Short-Range Wakefields of Collimators", Proceedings of the Particle Accelerator Conference, Chicago, USA, pp. 1853-1855, 2001.
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