IMS Connector Systemsは、高周波コネクタの製造に特化した技術主導型の国際企業です。同軸RFコネクタから同軸ケーブルアセンブリ、RFテストスイッチ、RFアンテナスイッチ、テストアダプタ、テストアセンブリ、自動車の電池端子やアンテナにいたる多彩な製品を製造、販売しています。同社のRoland Baur氏によるCST MW STUDIO(CST MWS)とCST EM STUDIO(CST EMS)のシミュレーション例をご紹介します。
同軸コネクタの開発過程ではさまざまなパラメータを決定する必要があります。決定されたパラメータによってコネクタのRF性能が決まります。本資料では、コネクタの熱特性を決定する電力定格を取り上げます。コネクタの最適な電力定格(Power Rating)とは、同軸コネクタが熱損失無しに伝送できるRF電力の情報です。しかし同軸コネクタの電力定格は実際には複数の係数に依存するため、制限電力をコネクタの種類によって一般化することはできません。
コネクタの電力定格は、下記の事項による制約を受けます:
1) コネクタ内部の消費電力。この熱損失には下記要因が関与します:
2) 下記に関連する熱条件:
上記を踏まえると、1個のコネクタについてすら制限電力の一般化は不可能であることは明らかです。10以上の異なる最大電力が得られても不思議はありません。この事実から論理的に導かれる結論は、コネクタの最大電力定格に関する正確な情報は熱テストかシミュレーションによってのみ得られる、ということです。ただしシミュレーションについては計算結果が現実と精度良く一致することが必要条件となります。その一方で熱テストは多大なコストと労力を要します。テスト機器は非常に高価で、時間も相応にかかります。IMS Connector SystemsのR&D部門は、顧客の要望に応じて製品をカスタマイズし、RFソリューションとして提供する事業を展開しています。このR&Dと製品管理、およびセールスの各部門間の緊密な協力により、市場の要求に応える数々の革新的な開発を行ってきました。ここに紹介する新しいQNSコネクタはその一例です。
新しいQNSコネクタは下記を特長とします:
コネクタのモデルデータはCST MWSのSTEPインポート機能でインポートしました。インポートモデルを図1に示します。このモデルに熱と電磁的材質プロパティを設定します。さらにサーフェス損失とボリューム損失を設定し、電流密度に関するデータを保存するための電界モニターと磁界モニターを定義しました。熱シミュレーションには熱ソースの定義が必要です。測定が行われるのと同じ周波数とRF電力で熱シミュレーションを行いました。
シミュレーションはメッシュ数745,000で、7.5GHzを最高周波数とするいくつかの周波数において行い(図2)、熱上昇係数を計算しました。シミュレーションの結果から設計された実機を図1上に示します。この実機にRF電力を印加し、コネクタペア外側の温度上昇を測定しました。高負荷を想定してコネクタにUT250ケーブルを接続し、ケーブルの影響を低減しています。測定はIEC61169-1に従って行いました。
基準電力の印加による温度上昇を図4に示します。表の数値と測定室の環境温度の和が、コネクタの絶対温度となります。このデータから温度上昇係数(度/W)を抽出しました。
シミュレーション結果と測定結果の差は僅かであり、コネクタの熱特性を調べる方法として電磁界と熱のコシミュレーションが有益なツールであることが示されました。必要な情報が速やかに容易に得られ、時間とコストを大幅に削減することができます。
まずはお気軽にご相談ください。
解析目的や現在直面している課題などお聞かせください。