雷は主に雲の中で発生し、雲中放電や地上への落雷を引き起こします。金属で覆われた構造に及ぼす雷の間接的な影響をCST MW STUDIO(CST MWS)で計算した事例をご紹介します。CST MWSではこのほか表面電流分布の計算からシールド構造への結合を予測することもできます。
雷に典型的な、立ち上がりが速く減衰が緩慢な信号は、二重指数関数で表すことができます[1]。CST MWSは、ユーザ定義によるこのような励起信号波形を容易に読み込み、基準信号として使用できます。解析ではこの信号を、構造への落雷点(この場合は航空機の機首:図2参照)と境界の間に加えました。尾部と境界の間に300 Ohmの集中素子抵抗を設置して放電路をモデル化し、またelectric境界条件を設定して閉じた電流路モデルとしています。
シミュレーションでは時間領域Hフィールドモニタを設定し、落雷に起因する表面電流を観測しました。計算した電流密度を図2に示します。電流が突然生じた後、ゆっくり減衰して行く様子が確認できます。機首の落雷点にピーク電流があるのは予想の通りですが、主翼中央部正面、尾翼および尾端に見られる高密度電流もEMI問題を考慮する要点となりそうです。
ユーザ定義信号を用いた落雷の時間領域シミュレーション事例をご紹介しました。落雷によって生じた表面電流がシールド構造に結合する問題なども非常に重要ですが、本資料では割愛しました。誘電損失や熱損失に起因する構造の熱問題も興味ある解析課題です。この課題はCST MPHYSICS STUDIOの熱ソルバーを使用して計算を行うことができます。
なお、シミュレーションに使用した航空機モデルは実寸大で、全長と翼長ともに25mを超えています。このように非常に大型の構造にもかかわらず、六面体メッシュ(FPBA)を使用した時間領域ソルバー計算の所要時間は、2GB RAMの3GHzデスクトップPCで15分程度でした。
[1] Buccella, C, S. Cristina and A. Orlandi, ” Frequency analysis of the induced effects due to the lightning stroke radiated electromagnetic field,” IEEE Trans. EMC, Vol. 34, pp. 338-344, 1992.
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