マルチバンド無線システム用のバンドノッチ・平面モノポールアンテナを解析した事例をご紹介します。広帯域平面モノポールアンテナとU字型スロットよりなるアンテナは、スロットによってバンドノッチ特性を表現します。ここでは2バンドノッチ特性を得るために3つのU字スロットが定義されています。このようなスロットは、マルチバンドアンテナや狭帯域ノッチを有するウルトラワイドバンド(UWB)アンテナの作出に適します。以下では論文「Multipule Band-Notched Planar Monopole Antenna for Multiband Wireless Systems」[1]の研究概要にしたがって、主にCST MW STUDIO(CST MWS)を使用したシミュレーションについて説明します。論文の研究では測定結果とシミュレーション結果が見事に一致しています。
本事例は韓国TaejonのKorea Advanced Institute of Science and Technology (KAIST)のYu教授のご好意により掲載します。
図1に示すように、平面モノポールアンテナと1/2波長U字スロットがアンテナを構成します。これに類似したアンテナは[2]で初めて提案され、後に[3]と[4]でさらに研究が進められました。平面モノポールのサイズ、給電ギャップ、グランドプレーンのベベリングとサイズなど、さまざまなパラメータが帯域幅に影響を及ぼします。アンテナのプロトタイプは半径75mmの円形のフェライト製グランドプレーン上に配置され、裏面の中央に搭載されたSMAコネクタによって励起されます。円形グランドプレーンの上部、1mmの空間を開けて垂直に設置された銅製平面素子の厚さは0.2mm、サイズは20×27mm、ベベリング角度は12度です。
アンテナ断面を図2に示します。両脇の2つは高周波ノッチ、中央が低周波ノッチです。これを75 Ohmsの同軸ケーブルで給電します。
アンテナの特性はCST MWSで容易に調べることができます。3通りのノッチ設定(3ノッチ、中央のノッチのみ、両脇の2ノッチのみ)それぞれにシミュレーションを行いました。
3通りのノッチ設定によるSパラメータを図3に示します。予想された通り、両脇のノッチは高周波モードに寄与し、中央のノッチからは低周波モードが生じています。
4GHzと4.78GHzにおける遠方界プロットを図4に、Polarプロットを図5に示します。これらの結果は、[1]に記載されたシミュレーション結果と測定結果に一致しています。
上記では[1]の内容の一部のみ紹介しました。それにもかかわらず、このような構造のシミュレーションで発揮されるCST MWSの特長や性能を示すことができました。CST MWS時間領域ソルバーは現実と同じ時間の枠組みのなかで構造の特性を捉えるため、UWBアンテナの解析に役立ちます。CST MWSだけでなく、CST DSも併せて使用することで一層柔軟な解析が可能となります。
測定結果とシミュレーション結果との詳細な比較については [1]をご参照ください。
[1] Wang-Sang Lee, Won-Gyu Lim, and Hong-Won Yu ″Multiple Band-Notched Planar Monopole Antenna for Multiband Wireless Systems″, IEEE MICROWAVE AND WIRELESS COMPONENETS LETTERS, WOL. 15, NO. 9, SEPTEMBER 2005
[2] M. J. Ammann, ″Squre planar monopole antenna,″ in Proc. IEE Nat. Conf. Antennas Propagation, Apr. 1999, p. 461.
[3] M. J. Ammann and Z. N. Chen, ″Wideband monopole antennas for multiband wireless systems.″ IEEE Antennas Propagat. Mag., wol.45, no. 5, pp. 146-150, Oct. 2003.
[4] S. -w. Su, K.-l. Wong, T.-T. Cheng, and W.-S. Chen, ″Finite-groundplane effects on the ultra-wideband monopole antenna,″ Microw. Opt. Technol. Lett., wol. 43, no. 6, pp. 535-537, Dec. 20, 2004.
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