能動部品とシステムレベルのシミュレーションの統合は、CST STUDIO SUTIEの特長ある機能のひとつです。本事例では180°のハイブリッド接合をトポロジに用いたミキサについて上記機能によるシミュレーションを行います。まず高周波シミュレータCST MW STUDIO(CST MWS)でハイブリッド接合のシミュレーションを行い、続いてCST DESIGN STUDIO(CST DS)でダイオードと整合回路を考慮します。CST MWSのシミュレーションでは測定と同様の結果が得られました。さらにCST DSで整合回路を最適化し、性能を向上させることができました。
CST MWSの3Dシミュレーションモデルを図1に示します。シミュレーションのポスト処理としてCST DSの回路図上でダイオードを付加し、シミュレーションを行い、Sパラメータ、時間領域波形、周波数領域スペクトルを得ました。
180°ハイブリッド接合のシミュレーションから計算されたSパラメータを図2に示します。
2.8GHzにおける表面電流のアニメーションを図3に示します(pdfでは静止画表示)。内蔵のマクロを使用して、アニメーションファイルの書き出しをごく平易に行えます。
パッケージの寄生成分とミキシングのダイオードもCST DSの回路モデルに含まれています(図4)。
前述の結果を図5?8に示します。シミュレーション結果と測定結果の間には良好な相関が見られます。
時間領域電圧波形(図7)で動作確認ができます。IF周波数はRFおよびLOに比較して非常に低く設定され、時間領域波形での識別を容易にしています。なお、180°ハイブリッドの設計周波数2.8GHzとLO周波数が整合する必要があります。図8では、適切な動作条件を、IFポートにおけるスペクトル成分とともに示しています。
図8に示すようにRF入力とLO入力の高調波成分が圧倒的で、出力スペクトルが乱れています。
3つのポートそれぞれにインピーダンス整合回路を接続して、全体のパフォーマンス向上を図ります(図9)。整合素子の値については、図5と6のSパラメータをもとに妥当な初期値を設定できそうですが、3つのポートをそれぞれ異なる周波数で同時に整合することは容易ではありません。このように時間を要するタスクでは、CST DSに内蔵された最適化機能を使用してソリューションを導き出すことができます。最適化された値を図9の表に示します。また、最適化後のSパラメータを図10に示します。
図10ではすべてのポートで反射損失が60dB以下であり、最適化が良好に働いたことが分かります。IFポートのスペクトルを再シミュレーションした結果を図11に示します。
整合回路によってミキサの性能が大幅に改善したことが図11から分かります。出力スペクトルはIFとRF/LOによって占められ、高調波は抑制されています。
CST MWSとCST DSを使用して180°ハイブリッドミキサの解析と最適化を行いました。測定を行い、シミュレーションの結果との間に良好な相関を確認しました。また、入出力ポートに接続したインピーダンス整合回路の最適化を行い、それによってミキサのパフォーマンスが向上することもシミュレーションで確認しました。
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