タッチスクリーンの部品設計に電磁界シミュレーションを使用した例をご紹介します。タッチスクリーンのセンサは、物体の存在や位置を静電容量に基づいて感知します。CST EM STUDIO(CST EMS)の静電界ソルバーには、電極システムのシミュレーションから容量行列を自動的に抽出する機能があります。電極上の指の位置をパラメトリックに変えて解析を行うことで、さまざまな指位置の行列を生成します。生成した行列は回路シミュレーションモジュールCST DESIGN STUDIO(CST DS)に自動的に送られ、そこで検出回路のシミュレーションと最適化を行うことができます。
電磁界シミュレーションの手順はまず、電極システムのモデルを作成します。CST EMSのシンプルで高機能のモデラーでモデリングするか、または(複雑な電極アレイなどは)EDAインポート機能を使用してCADデータを読み込みます。Cadence Allegro®、Mentor Graphics® Expedition®、ODB++などのファイルが使用できます。センサアレイ上部の指もシミュレーションに欠かせない要素です。これについても3D CADモデルのインポートが可能です。この例題ではSAT形式で指モデルをインポートしました。
インポートしたセンサの形状モデルに電極の電位を定義します。CST EMSでは電位グループの定義を直感的に行うことができます。電位を定義したタッチスクリーンセンサモデルを図1に示します。
電極システムに指を置いた状態の電界を図2に示します。このように今回のセンサシミュレーションは、特定の指位置についてシミュレーションを行い、等価容量を計算することを基本として行います。指位置は水平方向と垂直方向に、すなわち3次元的に変化します。これをパラメトリック解析に拡張し、容量を指位置の関数として導出します。パラメトリック解析が終了すると、容量データは自動的に回路シミュレータCST DSに送られます。ここで過渡解析を実行します。
図3: 容量行列センサの回路図(CST DS)
CST DSで作成した回路図を図3に示します。ここでは標準のGPIOを使用してパルスを生成し、コンデンサを帯電させます。所定の数のパルスを生成後、コンパレータを用いてGND電位になるまで直列抵抗を通じて放電させます。この放電時間をタイマーで計測し、相関を取ります。つまり、放電時間の差で指の有無を検出します。
図4: cx2y2位置の指を検出したことを示す
図4は、放電時間により指の位置を示す一例です。指の取りうる位置の範囲は、ユーザーが定義するパラメータセットに依存し、相当広くなる可能性があります。範囲が広いほど検出回路が複雑になります。
電磁界ソルバーは最適化機能を備えており、電磁界レベルやシステムレベルの最適化の実行が可能です。測定では難しい部品特性の追究が、シミュレーションでは容易に行えます。それとともにプロトタイプの製作回数の削減と、開発時間の大幅な短縮を可能にします。既存の装置に発生する不要な効果や障害の解析も、シミュレーションでは効率よく実施することができ、優れた費用対効果を示します。
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