マイクロ波管は、一般には電子ビームと構造の相互作用により直流エネルギーをRFエネルギーに変換する装置です。モノトロンはシンプルな構造のマイクロ波管です。比較的複雑な構造である進行波管や後進波発信器は、ビームと遅波構造の相互作用によりRF波を増幅させます。
本事例のモノトロンは、ビームにより励起され、キャビティのTM010モードで相互作用を起こします。構造モデルを図1に示します。CST PARTICLE STUDIO(CST PS)の3D Particle-in-Cell (PIC)ソルバーを使用してシミュレーションを行います。
モデモノトロンモデルは2つのキャビティで構成されます。キャビティはスロットにより結合します。また、スロットはビームの経路でもあります。文献[1]にしたがって、赤色で示す粒子源から粒子を、ビーム電圧20keV、10Aの直流電流として放出するシミュレーションを行います。
この構造を解析する方法にはいくつかあり、電磁界を計算するのはそのひとつです。これは電磁界プローブ機能を使用して行います。プローブは、所定の点において時間軸の電界/磁界をモニターし保存します。プローブを設定した位置(y = 0.8cm, z = 2.6m)を図2に示します。
プローブがモニターした信号を図3(左)に示します。振動はt>400nsにおいて積み上がり、t>750nsにおいて安定しており、[1]の予測と一致した結果となっています。また、プローブ信号の周波数スペクトル(図3右)では、4 GHzのピークとさらに高次の高調波が見られ、モノトロンの設計目標として意図した通りの結果を得ています。
ビームが発生する様子は、粒子モニターで確認することができます。相互作用プロセス初期のビームを図4に示します(@100ns)。この段階では電磁界はまだ僅かしか発生しておらず、そのためビームはほぼ不変なままキャビティを通過します。粒子エネルギーは、入力エネルギー20 keVを保持しています。
飽和状態に達した段階のビーム粒子軌道を図5に示します。キャビティの固有モードによる相互作用で粒子軌道が変化しています。固有モード界のために粒子がエネルギーを消失し、20 keV以下となっていることを表示色が示しています。
長軸方向の位置と粒子エネルギーの相関を位相空間プロットに表して、定量的な評価を行うことができます。図6左は、800ns(飽和状態)の位相空間プロットです。入力口(z = 0 cm)ではすべての粒子エネルギーが20 keVを示していますが、終端(z = 3.8cm)では13.5 keV以下となっています。
図6右は、終端(z = 3.75 ? 3.8 cm)における電子密度を示します。4.5 keVを示す電子が最多を示し、ここでも[1]の記載と同じ結果となっています。
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