誘電体レーザー加速器の原理

粒子加速器の小型化に向けた取り組みの一環として、従来の高周波に代えてレーザーを利用する研究開発が進められています。最初に行われた実験のひとつ[1]では、シリカ格子構造[2]の導波路が試みられています。800 nmにモードロックしたTi:サファイアレーザーを導波路の側面から照射します。照射によって導波路内に形成される電界が電子へのエネルギー転移を増幅する分布となることを意図して、導波路表面にはリッジが設けられています。

図1: シリカ格子構造 [2] [3]
図1: シリカ格子構造 [2] [3]

本事例では上記を模擬したシミュレーションを行います。シリカ構造モデルの真上から平面波を照射し、レーザーパルスを表現します。照射によりビームパスに沿って発生する電界成分のプロットを図2に示します。真空の導波路内部では principle of periodic field reversal [2] に従って、格子構造の電界に周期的な変調が生じます。この電界の作用により、導波路を通過する粒子のエネルギーが増大します。

図2:格子構造内部の電界分布アニメーション(pdfでは静止画)
図2:格子構造内部の電界分布アニメーション(pdfでは静止画)

次に、導波路のガイドチャネルに60 MeVの電子ビームを入射しました。CST STUDIO SUITEのトランジェントソルバーで電磁界シミュレーションを行い、その結果を使用してPic(Particle-in-cell)ソルバーで電磁界と粒子の相互作用を解析しました。解析結果を図3に示します。チャネルを通過する粒子がバンチ化する様子をグラフィカルに表示しています。

図3:Picソルバーの計算結果:格子構造チャネルを進行するに従いバンチ化する粒子ビーム
図3:Picソルバーの計算結果:格子構造チャネルを進行するに従いバンチ化する粒子ビーム

参考文献

[1] E. A. Peralta et al., "Demonstration of Electron Acceleration in a Laser-Driven Dielectric Microstructure", Nature (London) (2013)
[2] T. Plettner, P. P. Lu, R. L. Byer, "Proposed few-optical cycle laser-driven particle accelerator structure" Phys. Rev. ST Accel. Beams 9, 111301 (2006)
[3] E. A. Peralta, "Acceleration of electrons in a laser driven dielectric microstructure", NA-PAC'13, Pasadena, CA, (September 30, 2013)
[4] J. England, "Making Accelerators on Microchips", SLAC Years of Service Awards (March 19, 2015)

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