ビーム位置モニタのwakefieldシミュレーション

粒子加速器のピックアップ電極とキッカー電極はビームのオフセット検出に使用されます。検出した信号は増幅され、同じターンに同一電極に印加されます。その結果、電界によって粒子の運動量に変化が生じ、粒子の位置が変化します。

ピックアップ/キッカー電極のシミュレーションには下記の2通りの方法があります:

  1. 電極を励起し、電界が荷電粒子に与える影響を評価します。これは電極をキッカーとして扱うことに等しく、CST MW STUDIOでシミュレーションを行うことができます。
  2. 励起として荷電粒子ビームを使用します。粒子ビームに属する電界は、出力電圧に帰結する電極と結合します。この動作はピックアップ電極とみなすことができます。

空洞ウェイブガイドモードが励起されることが無ければ、上記のアプローチはアンテナ定理の相反定理と関連付けられます。

図1に示すピックアップ?キッカー電極は、GSI の ESR に使用されているものと同様な 1?4 波長の電極です。シミュレーションに当たり、構造の半分をモデル化し、残りの半分は対称条件を設定して表現します。図2 に示すポート 1 と 2 はビーム管の外側に接しています。ビーム管自体は非表示にしています。図中の青線と赤線はビーム軸を表します。

図 1:コピックアップ?キッカー電極モデルの 1/2 部分
図 1:コピックアップ?キッカー電極モデルの 1/2 部分

ビームはガウシアン波形を示します。図2には偏差、総電荷量、速度のような特性も表示されています。図2に明らかなように、ビームは超相対論的である必要はありません。

図2:ピックアップシミュレーションのビーム特性
図2:ピックアップシミュレーションのビーム特性

1?4 波長の電極の周波数応答は、出力電圧をビームスペクトルに正規化することによって求められます。正規化された出力結果を図3に示します。[1]のなかで理論的に予測された通り、周波数応答は正弦曲線的なふるまいをみせます。また、ピックアップシミュレーションとキッカーシミュレーションの結果は、空洞ウェイブガイドモードが確実に抑制されていれば一致するはずですが、図3(右)はその通りとなっています。周波数が高くなるにつれ、カットオフ周波数fcの空洞ウェイブガイドモードに対応する差異が現れます。このウェイブガイドモードのために相反定理の有効性は損なわれ、2つのシミュレーションの相互変換は不可となります。

図3:正規化された電極出力と周波数の相関
図3:正規化された電極出力と周波数の相関

バンチに対応する電界の絶対値を図4に示します。電極付近にはバンチ電界の、電極への結合が見られます。電極において得られた電界は(図1に示す)ポート1と2でモニタされ、吸収されます。

図4:運動荷電粒子バンチの電界の絶対値
図4:運動荷電粒子バンチの電界の絶対値

まとめ

CST PARTICLE STUDIOを使用したピックアップシミュレーションを紹介しました。キッカーシミュレーションはCST MW STUDIOでの実行が可能です。空洞ウェイブガイドモードが存在しないことを前提として、2つのシミュレーションの結果は相互変換が可能です。とはいえ、CST PARTICLE STUDIOではこのような(ほとんどの加速器では)非現実的な仮定に従わなくてもピックアップシミュレーションを実行でき、そのことが特長となっています。

参考文献

[1] P. Raabe: "Feldtheoretische Analyse von Detektoren und Ablenkeinheiten für die stochastische Strahlkühlung von Teilchenstrahlen", VDI Fortschrittsberichte, Reihe 21, Nr. 128, 1993.

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