最近発表された論文[1,2,3]では、スプリットリング共振器(SRRs)の密配列構造は電磁波結合効果によってジャイロトロピックな双異方性媒質と考慮できることが予測されています。本資料はLaboratoire d’Electronique et Electromagnetisme(L2E)における研究に関連して、CST MW STUDIO(CST MWS)によるSRRsのシミュレーションを通して、特定周波数範囲における後進波成分の伝搬を観測し、この構造が負の屈折率を持つ媒質に似た特徴を示すことを明らかにします。
シミュレーションに用いた周期構造を図1に示します。図に示すz軸方向から平面波を入射します。電界と磁界にはそれぞれx軸とy軸方向に沿う偏向を設定します。
メタマテリアル等価構造の周波数依存性屈折率は、(時間のかかる)アレイ構造のシミュレーションを行わなくても、単一素子のシミュレーションから抽出することができます。
反射率nと波動インピーダンスZの関係を図2に示します。
CST MWSの周波数領域ソルバーを使用した単一素子のシミュレーションでは、unit cell境界条件とFloquetポートモードを適用することにより無限周期構造のSRRを考慮することができます(図3)。計算されたSパラメータ(図4)を基に、有効屈折率(図5)を求めることができます。
有効誘電率と透磁率は、通常は εeff = n/Z と μeff = n.Zの関係式で求められますが、双異方性媒質の場合は電磁パラメータを積分する必要があり、単純な計算では求めることができません。[3]
図4と図5から、屈折率が負となる周波数帯のすべてが1つめと2つめの共振に現れていることが分かります。しかし、後進波伝搬が起きるのは、位相速度が負の固有モードを示す2つめの共振だけです[4]。この後進波伝搬を図6に示します。右から左へ伝搬する波が、構造内では左から右へと伝搬しています。
この後進波伝搬はファラデー効果によるものです。誘起された準静磁場(Hz)が平均1.1 mA/mで振動することがそれを裏付けます(図7)。この結果は、構造に沿って磁界プローブを設定したシミュレーションから得られます。z軸方向においても同様のHz場が自然誘起されるため、この効果に相互関係があることが分かります。
構造内部の電界分布をよく見ると、z軸方向の楕円偏波電界をふたつ(右旋波と左旋波)重ね合わせた分布であることが分かります(図8)。事実、SRRの各セルは擬似カイラルなフェライト特性を示します。
負の屈折率を有するレンズを14.85GHzの平面波で照射したシミュレーションでは、焦点が示されます(図9に)。正の屈折率では発散レンズとなります。
[1] R. Marques, F. Medina, R. Rafii-El-Idrissi, Role of bianisotropy in negative permeability and left-handed metamaterials, Phys. Rev. B 65 (2002) 144440-1-6
[2] C.W. Qiu, H.Y Yao, L.W Li; S. Zouhdi, T.S. Yeo, Routes to left-handed materials by magnetoelectric couplings, Phys.Review B75, 245214, 2007.
[3] S. A. Tretyakov, C. R. Simovski and M. Hudlicka, Bianisotropic route to the realization and matching of backward-wave metamaterial slabs, Phys. Review B75, 14504, 2007.
[4] H. Talleb, Z. E. Djeffal, D. Lautru, V. F. Hanna , “Investigation of backward-wave propagation on LHM Split RingResonators”, Conference Meta10, February 2010, Cairo, Egypt.
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